花盛りの被験体
第一章
6



「桜木さんって、結構、毛が濃いのねえ」
 ふいに、水穂が、奈々子の下腹部をじっと見つめながら、しみじみとした口調で言った。
 それに対して、奈々子は、口元を引き結んで黙っていた。
 水穂の顔に、だんだんと不気味な冷笑が浮かんでいく。彼女は、ぽんと手を叩いた。
「そうねっ……。これから、あなたの陰毛を採取することにするわ。もちろん、これは立派な実験と観察の一環ですから、拒否することは、絶対に許しません」
 そんな……。何を言ってるの、この人は、嘘でしょう。
 わなわなと立ち尽くす奈々子を尻目に、水穂は、平然とした顔で、再び戸棚へと歩いていった。
 
 水穂が取り出したのは、透明な小さいビニールの袋だった。幅は三センチほどで、チャックの付いたものだ。それを五枚持った水穂は、声を張り上げて女子学生たちに言った。
「誰か、桜木さんの陰毛を採ってくれる子はいませんか? わたしの分も含めて、五本です」
「はい、わたしがやります!」
 間髪を入れず、理香が名乗り出る。
 水穂の手から、五枚の小さなビニールの袋が理香の手に渡った。
 
 ビニールの袋を持った理香が、勝ち誇ったような表情で、奈々子に近づく。
 とうとう奈々子の感情が決壊した。
 顔つきが醜く歪み、その目から涙が溢れだす。
 奈々子は、両手で顔を覆い、肩を震わせながら泣き始めたのだ。両手の隙間から、籠もった泣き声が漏れる。
 それでもお構いなしに、というより、むしろ愉快そうに、理香は、奈々子の腰の前で立て膝になり、作業を実行する。
 恥丘に茂る陰毛を撫でつけながら、まず、一本を選んで摘んだ。
 理香が毛を引き抜いた瞬間、奈々子の全身がぶるりと揺れた。その様を見た理香は、なおさら快感そうな表情を浮かべる。
 そして、摘んでいる一本の縮れた毛を、一枚の袋に収めた。

「ねえ理香、もっと下の、おしっこの付いてそうなところから採ってよ」
 圭子が、はしゃぎながらリクエストを送る。
「オッケー」と理香は、気さくに応じた。
 もはや、奈々子には、それを拒絶する気力さえ残っていなかった。
 無防備な性器の肉には、理香の指先が、無遠慮に押しつけられる。
 理香は、奈々子の股間の、周囲とは若干、色の変わっている柔らかな肉に視線を注いでいる。
 二本目の陰毛が引き抜かれると、圭子と瞳は歓声を上げ、由美だけは、姉のような親友の惨事から目を背けていた。




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