花盛りの被験体
第二章
3



 水穂が、位置に着いた奈々子の臀部に、手を載せた。肉の感触を確かめるように撫でさすりながら、話を始める。
「こっち側の二人は、桜木さんの性器と、それと肛門を、よく観察していなさい。そして、どんな状態になっているのかを、向こう側の二人に伝えるのよ」
 おどろおどろしい話の内容もさることながら、奈々子は、『肛門』という単語に、ぞっとさせられた。
「それで、そっち側の二人は、桜木さんの顔から目を離さないように。この子が、どんな表情をしているか、逐一こっちに伝えてね。それも重要なことですからね」
 三人の女子が、嬉々として返事をする。由美だけは、呆然とした表情で黙りこくっていた。目の前に迫った、姉のような友達の肉塊。度の過ぎる卑猥な光景に、どこかショックを受けている様子でもある。
 
 この場の様相には、奈々子に対して、出来うる限りの屈辱を与えようという、水穂の黒い意図が、ありありと表れていた。
 奈々子を辱めることを、一番面白がっている理香。それに、奈々子の親友である由美。この、もっとも奈々子が嫌がりそうな二人の取り合わせの眼前に、剥き出しのおしりを向けさせる。その距離は、二人が、奈々子の臀部の産毛までも、はっきりと視認できるほどだった。
 そして、その気の遠くなるような恥ずかしさに耐える奈々子の表情を、残りの二人の女子に観察させる。
 女教授による、若くて美しい教え子への仄暗い嫉妬が、この凄惨な現場を作り出しているのだった。

 さっそく、圭子が、興味津々の様子で、理香に向かって訊いた。
「ねえねえ、理香。あのさ、奈々子のまん……、いや、性器って、どんな感じなの?」
 さっき、水穂にたしなめられたことを思い出したらしく、圭子は言葉を言い直した。
 その質問を待ってましたとばかりに、理香は、うきうきと実況報告する。
「やっぱり奈々子のって感じで、グロテスクで汚らしいよ。周りの肉の色が黒ずんでて、おしりのほうまで毛が生えてるし。それに、ビラビラのはみ出しがすごいの。やばいよ、これ」
「いやだぁー、きったなーい」
 圭子が、悲鳴みたいな声を上げる。隣の瞳が、侮蔑を込めた口調で圭子に囁く。
「やっぱりね。だってさ、この淫乱女のアソコが、綺麗なわけないじゃん」
 同じ女子学生とは到底思えない下劣な言葉責めに、奈々子は、ショックというよりも驚きを禁じ得ない。
「でも、なによりも困るのはさあ……、こんだけ近いと、臭いがすごいのおー。ねっ? 由美?」
 理香は、おおげさに顔をしかめ、わざわざ由美に話を振った。
「そんな……、こと、ないって……」
 頬を引きつらせる由美だが、首を小さく振って否定する。
 理香は、あからさまな疑いの目つきで由美を見たが、それ以上は言わず、にやりとほくそ笑んだ。



次へ

目次
小説タイトル一覧
メニュー
トップページ

PC用のページはこちら

Copyright (C) since 2008 同性残酷記 All Rights Reserved.