花盛りの被験体
第三章
3



 聞き耳を立てるように一同が沈黙していると、奈々子の股間から、その音が微かに鳴り始めた。
 性器が熟してきた音。それは、大学の保健室などでは、決して聞こえてはならない響きだった。
 
 長いこと黙っているのが苦手らしい理香が、場違いな子供のように呟いた。
「うわぁ……、まじで……。いやらしぃ、奈々子。由美に触られて感じてんのお」
 水穂がくつくつと低い笑い声を立て、由美の頭に手を置いた。由美の手が、ぴたっと止まる。
「村野さんったら、なかなか上手じゃない。ただし……」
 言いながら水穂は、両手の親指を、奈々子の股間の湿ったふくらみに宛がい、ぐっと裂け目を広げた。てらてらと濡れた桃色の粘膜が、鮮やかに露出する。

「まだまだ、五人分の粘液は、採取できないかな。あら……」
 何かを言いかけ、女教授は眼鏡の奥の目を細めた。奈々子の股間に顔を寄せ、内部を検分する。
 ほどなく、水穂は含み笑いに頬を膨らませ、由美の横顔を見やった。由美は、見るに忍びないという様子で頭を垂れている。
「村野さん、面白いものが見えるわよ……。この子ったら、あなたに触られるのが、よっぽど気持ちよかったんじゃないかな。もっとも敏感なところが、顔を出しちゃってるんだもの。……確認できるかしら?」
 由美は、おそるおそるといった感じで、開かれた奈々子の局部へと、焦点を合わせていった。
「うっわ……。ホントだあ。由美、わかるでしょう。奈々子のクリ○リス、皮が剥けてるじゃん。由美が奈々子を感じさせたから、こんなふうになってんだからね!」
 横で覗き込んだ理香は、興奮気味になって、露骨な物言いで口を挟む。
 由美は、なんの返事もしなかった。声を発することができないという有様である。そんな由美に対して、水穂は、非情極まりない指示を告げた。
「愛撫を続けなさい。とくに、この突起の部分を集中的にね。いいわね?」
 水穂が性器から手を離し、左右に引っ張られていた陰唇が閉じる。
 由美の表情は、今にも泣き出しそうなものに変わっていた。虚ろな目で、姉のような友達のおしりに視線をやっている。

「どうするの? やるのか、やらないのか。はっきりしなさい」
 返事のない由美に対し、水穂は厳しく問う。
 由美は、何かに憑かれたような雰囲気を漂わせながら、両の手を伸ばしていく。すると女教授は、怒りの仮面を外すかのように、にっこりと微笑んだ。
 由美は、水穂に倣って、濡れた大陰唇に両の親指を食い込ませた。ぐにっと肉が横に歪み、それに引っ張られて陰裂も広がる。奈々子の視界には入らないため、由美は、そのグロテスクな見た目や臭気を、あからさまに嫌がっていた。
「よーく観察しておきなさいよ。同い年の女の子の性器なんて、これから先、お目にかかる機会なんてないでしょうからね」
 我ながら正論だとでもいう風情で、水穂は腰に手を当てる。



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