花盛りの被験体
第三章
4



 しばらく由美は黙っていたが、さっきと同様、ぽつりと言った。
「奈々子……。ごめん……」
 なにが、ごめんなのよ……。やめて、やめて、やめてよ。奈々子は、その瞬間が訪れることに戦慄し、胸の内で絶叫していた。
 しかし、その悲痛な願いは届かず、とうとう由美の指先が小さな突起に接触した。
「あっ……、んんぅ」
 不覚にも声が漏れ、奈々子は、全身の毛が一斉に逆立つような感覚に襲われた。その一瞬で、頭の中はパニックの極致に陥った。
 愛液に濡れたクリ○リスを、由美の指に撫で上げられ、痺れるような波が間断なく体の中を通り抜けていく。絶え間ない荒い呼吸の中に、時折声にならない悲鳴が混じった。
 世の終わりのように悲しくて屈辱的なのに、皮肉にも、性的な快感だけは増長されていった。どんな悲惨な状況だって、クリ○リスまで触れられては、女としての反応を抑制することなんて、できっこない……。そんな思いが、奈々子の脳裏を駆け巡っていた。
 
 その時だった。固くなった突起を、くにゅっと指で挟まれて、鋭敏な神経の塊が圧迫を受けたのだ。脊髄をまさぐられるかのような強烈な恥辱と、それに劣らないほどの快感とが、奈々子の肉体を同時に貫いた。
「はああああっ……」
 奈々子は、完全に自制心を喪失し、悲痛な咆哮のような声を発していた。背中がのけ反って腰が落ち、四つん這いの体勢が崩れる。腕だけを突っ張った、腹這いの格好になった。奈々子の長い脚は、ベッドの枠から飛び出て、後ろの由美と理香の体にぶつかっている。

「やだあ……。ケダモノみたい」
 圭子が、唖然とした顔で呟いた。隣の瞳も同調する。
「いつもは真面目ぶってるけど、これが奈々子の本性なんでしょ。気持ち悪い。あきれた変態女」
 奈々子が崩れる直前に、由美は慌てて手を引いていた。今やその指には、あみだのように愛液がまとわり付いている。
「ねえ奈々子……、脚が邪魔なのぉ、ちゃんと腰を上げなよぉ」
 理香は、聞き分けのない子供のように、奈々子の腰の両脇を持って、その体を浮かそうとした。

「お願い、もうやめて……」
 奈々子は、醜態を晒してしまったことを痛感しながら、この場の誰にともなく訴えた。
 しかし無情にも、ポニーテールの髪の房を、水穂につかまれる。
「体勢を戻すのよ……。これから、あなたの粘液の採取を始めるんだから」
 血の気が引いていく。本当でやる気なのか、そんなことを……。もういっそ、裸のまま保健室を飛び出そうか。けれども、情け容赦のない女教授の隙をついて逃げ出す勇気など、とてもじゃないが湧いてきそうになかった。
 
 奈々子は、すべてを諦める心境で、由美と理香の眼前に再びおしりを突きだした。
「うわっ、いやだぁ……。マン汁が、シーツにべったり付いちゃって、糸引いてるぅ」
 理香が、悲鳴のような声で言い放った。
 その発言は、誇張でもなんでもなかった。奈々子の腰が落ちた際、性器がシーツにくっついたせいで、溢れた愛液が、そこに溜まっていたのだ。卑猥極まりないことに、今、腰を後退させている奈々子の股間と、シーツの濡れた部分とに、細い粘液の繋がりができていた。その状態が数秒間もの間続き、粘液の糸は、ぷっつりと切れた。
 
 よく熟された性器は、裂け目から愛液を滲み出させており、太ももの付け根までもが濡れていた。今、一筋の汁が、太ももの皮膚を伝い落ちようとしている。
 奈々子の愛液にまみれた由美の手に、プラスチックのスプーンが手渡された。そして、五枚のビニール袋が、シーツの上に並べられる。
 水穂が、わななく奈々子のおしりのほうに顎をしゃくり、無言に命令した。由美は、哀しげに一度目を閉じ、そして、左手の指で奈々子の性器を開いた。



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