堕ちた女体と
華やかな晩餐
第六章
2



「千尋ちゃん。わたしたちも、食事の席に、こんなものをずっと置いておきたくないの。だから、お願い、早くやってくれるかな」
「あ……、はい……」
 取りあえず返事はしたものの、千尋は、了解を伝えたわけではない。亜希に何を命じられているのか、理解できていなかったのだ。だから、意味もなく指をいじったりと、おろおろしているばかりだった
 
 すると、能面のような顔をした加納が、千尋に迫ってきた。千尋の背後に回ったかと思うと、突然、千尋のおしりの肉に、ぴしゃりと手を貼りつけた。
「ひっ!」
 驚愕の悲鳴と共に、千尋は、背筋を反り返らせていた。
「ぼうっとしてちゃ駄目じゃない、千尋ぉ。早くこっちに来なさいよ……」
 加納は、おしりに貼りつけた手で、千尋の体を前に押してくる。ものすごい力だった。
 テーブルのほうへと、脚が、強制的に数歩送り出された。それでも加納は手を緩めない。おしりを押す、という加納の行為には、千尋に対する、表に出せない苛立ちが込められているのを、千尋は強く感じ取っていた。あからさまに怒りをぶつけてこないのは、客人である朱美の目を気にしているのだろう。
 
 千尋は、テーブルクロスに手がつく位置にまで、前進させられた。両手でテーブルの端をつかむ。
 目の前の透明な容器には、自分の体から排泄されたものながら、見るもおぞましい恥の極みの塊が、黄色い液体に浸っている。そこからは、恥の極みの臭いが濃密に漂っていた。
 今、この瞬間も、亜希や朱美が、それぞれの目と鼻で、それを捉えていることを思うと、気が触れそうなほどの羞恥に襲われる。千尋の息遣いは、ひどく荒くなっていた。
 千尋は、亜希に視線をやった。
「ねえ、わたし、どうすればいいの……」
 千尋の無様な様子を眺め、含み笑いを浮かべていた亜希が、唖然とした顔になる。
「え? ねえ千尋ちゃん。さっき説明したでしょ。新鮮なおしっこを出してねって言ったじゃなあい。もう忘れたの?」
「え……。ああ、うん、うん」
 自分でも意味不明な返答をしていた。そうだ、たしかに亜希は、そんな狂ったことを言っていた。それで、自分は拒否することなど許されないので、おしっこを出さないといけない。で、その場所というのが……。もう、何もかも訳がわからない。



次へ

目次
小説タイトル一覧
メニュー
トップページ

PC用のページはこちら

Copyright (C) since 2008 同性残酷記 All Rights Reserved.