堕ちた女体と
華やかな晩餐
第七章
3



 亜希と朱美は、食事が始まって十五分もすると、表情や喋り方に酒の酔いが現れ始めていた。
「どう? 千尋ちゃんも何か食べたいでしょう? はい、あげる」
 亜希は、前菜をつまんだ箸を、千尋の口もとへ突き出した。
 食べる気になどなれない。千尋は口を閉じていたが、亜希は、唇の中へ強引に箸を突っ込んできた。吐き出してやりたかったが、反抗的な態度を見せても何にもならないと思い、それを噛み始めた。
「千尋ちゃん、おいしい? でも、ちょっと味が薄かったでしょ?」
 亜希は、悪意のないような微笑みを浮かべ、千尋を見下ろしている。下手くそな化粧で、初めから赤らんでいた頬だが、アルコールで上気したせいで、余計に赤くなっていた。
「やっぱり、味が薄かったでしょう。やっぱり……。今、味付けしてあげるから、ちょっと待ってね、千尋ちゃん」
 なぜか亜希は、ひとりで合点し、今度は、レタスとアボガドを指でつまんだ。

「えっ……、なにしてんの亜希ちゃん」
 朱美が、顔をしかめた。
 ぴくりと千尋の下半身が反応した。
 今、亜希のつまんだレタスとアボガドが、食事中には決して触れられなかった部分に置かれているのだった。ペペロンチーノの盛られたすぐそばだったが、そこは、陰毛の茂る肉の丘だった。
「やだっ、ちょっと汚い……」
 朱美が、微苦笑をして言った。しかし、言葉とは裏腹に、何かを期待しているふうでもあった。
「調味料、調味料……」
 亜希は、ぶつぶつと呟きながら、突然、陰毛の中に埋めた前菜で、恥丘をごしごしとこすり始めた。前菜の汁気で、陰毛が皮膚にへばり付いていく。
「うっ……」
 千尋は、その不快感に耐えきれず、がたりと脚を動かした。整然と並んでいたフランスパンが、テーブルに落ちていく。
「千尋! 食べ物が載ってるんだから、動くんじゃないよ!」
 加納が一喝し、千尋の両膝をつかむと、テーブルに無理やり押しつけた。
 
 心臓が早鐘を打っている。女体盛りとして、料理を載せる『器』に徹していれば、この時間を、なんとかやり過ごせると思っていた。しかし、亜希は、酒の酔いも手伝ってか、それだけでは物足りなく感じ始めたようだった。
 ふふふ、と亜希が笑い声を漏らした。その直後、亜希の手にある前菜が、千尋の性器の割れ目へと入り込んできた。
 総毛立つ思いだった。身をよじって逃れたくても、加納に両脚を強く固定されていて動けない。
「千尋ちゃーん。千尋ちゃーんのためにぃ、味つけしてあげるんだからぁ、ちょっとくらいガマンしてよーう」
 亜希は、呂律の怪しい口調で言い、つまんでいるレタスとアボガドを、肉の割れ目に沿って上下に動かしていった。
「ああぁっ……」
 不覚にも、千尋は、喉の奥から悲鳴に似た声を漏らしていた。断続的にクリ○リスがこすられ、その刺激が、電気のごとく千尋の肉体の芯を貫いていった。加納の手による圧力を押し返すように、片膝が立ち始める。おしりが何度か浮き上がり、魚類がのたうつようにテーブルを打った。
「やっだあ、女体が感じてるー! なんか、すんごい淫らな光景を見せられてる気分なんだけど!」
 珍しく朱美が興奮した様子で、嬌声を上げた。
 ふざけんな……! 好き勝手を言ってはしゃいでいる朱美を、怒鳴りつけてやりたい。
 おしりを浮かせて亜希の反対側、朱美のほうへと曲がっていく千尋の腰を追うようにして、亜希は、執拗に性器を責め続けてくる。
「女体、気持ち悪いから、こっちに寄ってこないで!」
 朱美が、千尋の肩を邪険に小突いた。
「千尋! じっとしてなさいって言ってんでしょうが……」
 加納が、本腰を入れて千尋の下半身を押さえつけてきた。腰と太ももに、体重を掛けられる。千尋の裸体に載っていた料理なら、すでに大半が落ちてしまっているというのに。
 腰と両脚を固定されてしまうと、その耐えがたい刺激が、何か鋭利さを増して肉体を襲ってくるように感じられた。
 加納は、冷ややかな薄笑いを浮かべ、千尋の身悶える様を眺めていた。

「あふぅ……。ううっうっうっ」
 忌まわしい刺激を少しでも軽減したいという無意識が、千尋を喘がせていた。しかし、苦痛とは裏腹に、生理的な反応として、生温かいものが膣口から滲み出していることにも、千尋は気づいていた。
 かろうじて動かせる上半身を、必死に左右によじる。苛烈に責め苛まれている下腹部から、体の上半分だけでも分断して逃そうとするかのように。
「いやぁ……、あっ、あっ、もうやめてぇ、亜希ちゃん……」
 あられもない声を発してしまう口もとを覆いながら、千尋は、消え入るような声で哀願した。
 排泄した大便を見られ、放尿の瞬間を晒し、羞恥心や屈辱感といったものは、もう、とっくに消えていると思っていた。だが、今、千尋の心と体は、絶望的なまでの恥辱に焼かれていた。
 いつしか、目には涙が滲んでいた。
 
 亜希が、くすくすと笑いながら、ようやく手を止めた。
「千尋ちゃーん。なに、あーん、とかエッチな声出してんのぉ? 朱美ちゃんもいるんだから、やめてよぉ、恥ずかしいなあ」
 亜希は、千尋の恥部に挟み込んでいたレタスとアボガドを、おもむろに抜き取り、それをじっと見つめる。そこで、加納も手を離した。



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