堕ちた女体と
華やかな晩餐
第七章
7



 それから二十分ほど経っていた。
 新しいテーブルクロスに替えられたテーブルの上に、さっきまでと同じように、千尋は、仰向けで横たわっていた。千尋の体の表面は、消毒液を染み込ませたタオルで、もう一度拭かれていた。涙と鼻水の跡も、綺麗に拭き取られた。
 今は、ミルクのムースとフルーツが、双方の乳房を覆うように盛りつけられている。晩餐のデザートだった。

「加納さん、もし女体が耐えられなくって、デザートが食べられなくなったら、本当に女体は、責任を取ってくれるんですかあ?」
 朱美が、わくわくした様子で訊いた。
「もちろんです。少々手荒いやり方になると思いますが、この子に、体から処女の血を流させたうえで、きっちりと、朱美さまに謝罪させます」
 千尋を見下ろして立っている加納が、どこか誇らしげな口調で答える。今では、朱美も、すっかりサディスティックな行為を愉しむようになっている。だから、加納も、初めは控えようとしていた暴力的な発言を、もはや一つのサービスのように提供していた。
「わかりましたー。じゃあ、女体は、嫌がって暴れたりは、絶対にできないねえ……」
「じゃあ、そろそろ頂きますかっ。ね、朱美ちゃん」
 亜希が、陽気に声を掛ける。
「うん、おいしそー」と朱美。
 彼女たちは、スプーンもフォークも手にしていなかった。
 
 もうすぐ、想像も付かないほどの、おぞましいことが始まろうとしている。千尋には、その現実を現実として認めることはできなかった。しかし、体は小刻みに震えっぱなしで、かちかちと歯が鳴っていた。
 やめてください……、亜希ちゃん……。最後に、亜希の良心にそう訴えたかった。だが、喉の奥から出てくるのは、言葉にならない、微かなうめき声のようなものだけだった。
 
 うっすらと口を開けた亜希の顔が、左の乳房に迫ってきた。その口が、ムースとフルーツの層の上辺を、そっと含めていった。
 右の乳房に盛られているほうを、朱美が、同じようにしていく。
 亜希は、ピンク色の舌をゆっくりと垂らした。悪夢のようだった。
 乳房のなだらかな斜面に、その舌先が、べたりと張り付いた。その瞬間、全身にびっしりと鳥肌が立つのを、千尋は感じた。
 亜希の舌が、柔らかい肉の丘を這うようにして、ムースとフルーツの層を削っていく。
 千尋の喉の奥から、甲高く間延びした声が漏れた。上体が反り返り、背中がテーブルから浮き上がった。発狂しそうな嫌悪感に、千尋は、ぶるぶると身悶えた。
 もう、あとどれだけ正気を保っていられるのかもわからない。
 視界の隅に、立っている加納の姿があった。加納は腕を組み、せいせいするとでもいうような表情で、それを鑑賞していた。
 
 白いムースと唾液に塗れ、てらてらとした左右の乳房を、それぞれ、亜希と朱美が舐め続けている。
 亜希は、舌を押し付けたところが柔らかくひしゃげていく様と、苦悶する千尋の表情を見比べ、やたらと面白がっていた。
 もう片方の乳房を、朱美が、べろで弾くようにして舐め上げる。白くなった柔らかい肉の丘、それ自体が、まるで一個のデザートででもあるかのように、ぷるりと揺れる。
 亜希が、いたずらっぽい顔で朱美に目配せし、ふくらみの先端を指し示した。朱美も、それに応じてうなずく。
 けばけばしい目をした、お嬢様たちの舌が乳首に触れた時、千尋は、奇声を発して目を見開き、天井を見上げていた。
 シャンデリアの輝きは、眩しい。




目次
小説タイトル一覧
メニュー
トップページ

PC用のページはこちら

Copyright (C) since 2008 同性残酷記 All Rights Reserved.