バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第二章〜憧憬と悪意
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 チャイムが鳴り響いていた。
 今日の最後の時限である、英語の授業が終わったのだった。
 いけない、いけない。今年は受験なのだから、授業中は集中しなければ。
 ふと、香織は、前のほうの席に目を向けた。
 涼子は、普段と変わらぬ様子で、隣の席の子と談笑していた。だが、その横顔には、悲しみや不安の暗い影が滲んでいるようにも見えなくもない。昨日の一件で、涼子が、精神的に多大なショックを受けているのは、間違いない。そして、今日も部活後には受難が待ち受けていることを思い、心底不安になっているはずなのだ。それでも、友達には、そんな素振りは見せまいと努めている。
 香織は、涼子のいたいけな姿に、またしても胸の奥をくすぐられていた。

 帰りのホームルーム終了後、香織は、二階の待ち合わせ場所に向かった。
 すでに、さゆりは待っていた。香織を目にすると、意味深とも無意味とも取れる微笑を浮かべる。
 まったく不思議な後輩だ、と思いながら、香織は挨拶代わりに、さゆりの肩をとんと押した。
 するとさゆりは、今度は、口元の両端をはっきりと吊り上げた。意味ありげな笑いだった。



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