バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第五章〜美女と美女
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 きったないおしり……。前日とまったく同じ感想を抱いた。
 今、香織とさゆりは、涼子の体の真後ろに悠然としゃがみ込んで、視界をどっかりと占める大きな臀部を眺めている。
 こうして裸にさせ、下半身を観察してみると、 スパッツに覆われていた範囲と、常に露出している部分とでは、肌の色に若干の違いがある。 屋外でのランニング等で、日焼けしたのだろう。たくましい太ももの中ほどに、その境界線が確認できるのだが、だからといって、そこから上が、がらりと白く変わっているわけでもない。
 すなわち、元から涼子は、どちらかというと肌の色が濃いのだ。健康的な感じがして、 いかにも涼子らしいと思える。
 だが、その要素は、皮肉めいたことに、臀部においては、視覚的にマイナスの効果をもたらしていた。浅黒い色をした、ド迫力の大きさのおしりは、どういうわけか妙に汚らしく見えるのである。
 前日、香織は、涼子の背中に、『きったないおしり』と言葉を浴びせたが、あれは、悪意というより、香織の率直な感想だった。
 
 さらに、今は、太ももから臀部全体にかけて、ぷつぷつとした鳥肌がびっしりと立っており、細やかな産毛が逆立っているのまで視認できる。部活で流した汗が乾き始め、全裸でいるのが寒いのか、それとも、あまりのおぞましさに悪寒が走っているのだろうか。なんにせよ、醜いことこの上ない。
 その汚らしいおしりを眺めていると、香織は、ふと、『うんこ』を連想してしまった。すると、ちょっとした邪念を思いつき、香織は、ひとり笑いをこぼした。さっそく、それを言動に移す。
「ねえ、南さん。便秘してるぅ?」
 自分で言っていて、笑ってしまうのを抑えられない。
 あまりにも突飛で馬鹿げた問いかけに、隣にいるさゆりが吹き出した。
「なに言ってんですかっ、香織先輩……」
 涼子を拘束している状態の明日香にもウケたらしく、彼女は、笛の音みたいな声でせせら笑った。
 尋ねられた涼子だけが、凍りついたかのように動かなくなっていた。
「なっ……」と、絶句したらしい涼子の声が、かすかに聞こえた気がする。
 おしりが裸出していることに対する、香織の当てこすりの質問に、どこかショックを受けた様子でもあった。
 香織は、アイデアが奏効したことに快感を覚えながら、視線を下に戻した。

 今、涼子の両脚の筋肉質な太ももは、滑稽なまでに、ぴったりとくっつき合わさっている。むろん、香織たちに性器を見られたくないがため、そうしているのだろう。今の涼子にできる、精一杯の抵抗だった。
 その、きつく太ももを閉じた格好は、臀部の肉が左右に張り出して見えるため、ただでさえ巨大なヒップが、余計に強調されて映る。それはもはや、セクシーやエロティックといった優美な表現は到底当てはまらず、ただ下品としか形容のできない代物だった。
「どうなのー? 南さん。便秘? それともちゃんと出てる?」
 香織は、ねちっこく言いながら、涼子の浅黒い肌にそっと触れた。腰骨のあたりに。
「いやぁ! さわんないで!」
 掌に皮膚の感触を感じるが早いか、涼子が野太い声を上げ、おしりの肉を激しく震わせながら前に逃げようとする。
「りょーちんっ、暴力反対!」と明日香が、鋭く牽制した。
 明日香の細くて白い指が、涼子の背中の皮膚に食い込み、その体が止まる。
 涼子は、女軍人が敬礼の姿勢と取る時のように、わずかに開いた太ももを、即座に、ぎゅっと閉じる。
 だが、その固い防御が崩れた、今の一刹那、股間に現れた陰毛が、香織の瞼に焼きついた。
 げっ……。すごい……。香織は、黒々と茂った毛の量に、ちょっと信じられない思いだった。



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