バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第五章〜美女と美女
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 女としての最後の恥じらいから、ぎゅっと太ももを閉じていた、今までの涼子の格好は、滑稽極まりない眺めだった。往生際が悪すぎるから、むしろ、観念して両脚を自然に伸ばし、形だけでも堂々とした体勢を取っているほうが、まだマシだと思った。
 しかし、それは違っていた。どうあっても、両脚は、ぴったりと合わせておくべきだったのだ。つまり、涼子の判断は正しかった。汚辱に見舞われ、希望を限りなくすべて奪われた状態でも、機転を利かせることのできた涼子の頭脳と神経には、拍手を送ってやりたいほどだ。
 だが、どうやら、その精神力の糸も、ぷっつりと切れてしまったようだ。女軍人よろしく、筋肉の張っていた太ももが、今では弛緩しており、両脚は、棒立ちの状態になっている。
 臀部の向こうに、剛毛に包まれた、ぼってりとした肉が覗いていた。表面は、ひどく黒ずんだ肌色で、なんだか、ちょっと触れただけで、落ちない臭いが付着しそうに思われた。まるで、熟れすぎて変色した、グロテスクな果実が垂れ下がっているかのようだった。

 一線を越えてしまったという思いが、またしても、もたげてくる。これほどまでの仕打ちを、してもいいのだろうか。今すぐに中止するべきだ、と人道的な言葉も心の内から聞こえてきて、香織は、少々戸惑ってしまう。
 だが、そこで香織は、自分の中の哲学を用いることで答えを導きだす。
 例えば、あたしだったら……。こんな恥ずべき淫猥な部分を、同校の生徒に観察されているという立場を、自分自身に置き換えて考えてみる。想像するだけで、頭がくらくらしてきた。
 そう、だからこそ、快感なんじゃないか。あたしだったら、到底、耐えられないような恥辱だからこそ、他人に、涼子に、味わってもらいたいのだ。そして、その様子を間近で観賞するのが、至極の悦びなのだ。
 こうして戸惑いや逡巡を通過するたびに、サディストとして尚のこと冷酷になり、また、歯止めというものが消えてゆく。



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