バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第七章〜放課後の教室
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 そして、現実的には、そんな悠長な思考を巡らしている状況ではない。滝沢秋菜に話しかけたのは、気を紛らすための、一種の逃避だったのかもしれないと思う。
 たったひとり残された教室。もうすぐ、香織たちがやって来るはずだ。緊張と不安、そして怒りが、涼子の精神と肉体を急速に支配しだした。
 むだ毛の処理は禁止だからね、だって。ふざけんなよ……。もちろん、あんな馬鹿げた命令に従うわけがない。
 思えば、あの三人には、三者三様の忌まわしさがあった。
 吉永香織。計略の首謀者だと思われる、なにより憎き女。涼子に対する嫌がらせのさなか、三人の中でも、ひときわ悪意が強く、また、にやにやと下卑た顔つきで、涼子の恥辱を愉快そうに観察するのだった。
 竹内明日香。涼子以下、バレー部員たちを欺いて、神聖なる部活動に入り込んだこと、絶対に許さない。いきなり抱きついてきたりと、変態的で気色悪く、何をしてくるかわからない不気味さもあった。
 石野さゆり。性悪な年下ということで、ある意味、もっとも屈辱感を感じさせられる存在かもしれない。
 あいつらに、人間としての真っ当な心はない。わたしは、これから、三人の悪魔と向かい合うのだ。
 指定された時間まで、十分を切っている。両脚の底のほうから、寒さが急激に這い上ってきたのを感じた。



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