バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第八章〜密室
1



 ふと、囁くような話し声と複数の足音が聞こえてきた。それは、だんだんと、この教室に近づいてくる。
 鼓動が速まる。とうとう来たのか……。時間的にも、あいつら以外にありえない。
 覚悟は十二分に決まっていたはずなのに、いざとなると、あの三人と対峙するという現実が信じられない思いがする。

 南涼子は、教室の真ん中らへんの席に着いていた。中央に陣取ったほうが、心理的に有利だという判断だった。
 教室の前のドアが開く音に、全身が痺れるような緊張を感じた。
 案の定、吉永香織の姿が現れた。香織は、涼子のことを認めると、あからさまな侮蔑のこもった視線を向けてくる。普段は、同じ教室内でも無関係な者同士として振る舞いながらも、突然、その偽りのベールが取り去られるおどろおどろしさ。
 続いて、石野さゆりと竹内明日香も入ってきた。
 三人とも、涼子とは対照的に、緊張感など微塵もない顔つきだった。自分たちの絶対的優位を、少しも疑っていないようだ。つまり、再び、涼子を辱める『遊び』ができると、胸を躍らせているのだ。
 涼子は、完全に舐められていることを再認識し、激しい怒りと共に、ゆっくりと椅子から立ち上がった。

 例によって不快な薄笑いをしている後輩に、香織が指示をした。さゆりは、入ってきた前のドアに鍵を掛け、後ろのドアに向かった。
 施錠の冷たい音が鳴る。ここは、密室となったのだ。
 その事実は、この場で打ち勝たなければ、またしても、先日と同様、果てしのない恥辱を味わわされるという現実を、否応なく突きつけてくる。



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