バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第八章〜密室
2



「ねえー、南さん。なんか勘違いしてるでしょ。まだ自分の立場が理解できないんだ?」
 香織の第一声がそれだった。初っ端から、予想以上に攻撃的である。
「明日香のことは、もうマネージャーとして認めないつもりらしいじゃん? よく、そんな強気な態度になれるよね」
「りょーちん、あたしはぁ、なんで部活に出ちゃいけないのぉー? 納得できないんですけどー」
 まともに反論するのは馬鹿らしいが、香織たちは、涼子の出方を待っている様子だった。それならば、と腹式呼吸で息を整えてから、努めて平静な声を出す。
「ふざけないで……。竹内さん、あんた、まだ部活に出るとか、くだらない冗談はやめてよね」
 涼子は、斜めに明日香を睨む。明日香は、一瞬きょとんとしたが、敵意を露わに、冷たい眼差しを返してくる。
「まあ、明日香、そんなに本気で怒る必要ないよ。もう一度、自分の立場をわからせてやればいいんだからさっ」
 香織が、取りなすように口を挟んだ。

「あたしたちが来るの、わかってたんだからさ、前もって着てるものを全部脱いで、裸になって待ってろよって話だよねえ」
 香織は、気の利いた台詞だと自賛したように得意気な表情になり、明日香とさゆりが、揃ってせせら笑う。
 涼子にとっては、はらわたのちぎれるような屈辱だった。
 吉永香織に、本気で殺意を覚える。
「勝手に言ってろよ……。もう脱ぐわけないでしょっ」
 怒り心頭に発して、かすかに声が震えた。
 だが、香織は、憎々しい含み笑いを漏らし、むしろ口論を愉しんでいる風情である。
「なに、この南さんの態度……。なんか逆ギレしてんだけど……? ねえ、さゆり、せっかく見っけてきたアレ、どうしようか?」
 香織が話を振ると、さゆりは、はにかむように笑いながら小首を傾げる。



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