バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第十一章〜間隙
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「南さん、じゃあ逆にさあ、滝沢さんは、あんたのことをどう思ってるのかなあ? もしかしたら、嫌いだったりするのかもよ? どう?」
 香織の問いに、ぴくりと反応してしまう。滝沢秋菜との記憶が、走馬灯のように脳裏をよぎった。
「わからないけど……、べつに、そんなことはないと思う……」
 涼子は、後ろめたい時のように、斜めに視線を落として言った。
 
 ふと、奇妙な気配を感じて、ちらりと目を上げると、香織の口もとには、舌なめずりでもしそうな笑みが浮かんでいた。気のせいか、明日香とさゆりも、何か意味ありげに笑いを堪えているように思える。
「そうだよねぇ! 変なこと訊いてごめんねっ……。南さんが、もっと心を開いてあげれば、滝沢さんと絶対に仲良くなれるよ。あたしたちが、そのお手伝いしてあ・げ・るっ」
 目鼻立ちのぱっとしない香織が、目もと口もとを派手に動かし、目一杯、皮肉を見せつけていた。後輩が、わざとらしい拍手で合いの手を入れる。
 
 そして再び、滝沢秋菜の体操着が、涼子の裸身に突きつけられる。
「はい、これ……。まず手始めに、これを股に挟んで……。だいじょーぶ、あたしの言うとおりにすれば、仲良くなれるから。保証する」
 何を言ってる……。この女は、何を言ってるんだ。香織の言葉を反芻しつつ、同時に、それを実行した時の自分の姿を思い浮かべてみる。涼子は、純白に赤い丸首の布地を茫然と見つめたまま、思わず息を呑んだ。

「あっ……、もしかして抵抗感じる? そっか。だって、南さんのま○こ汚いもんねっ。自分でも、よくわかってるんだ? じゃあさ、膝で挟んでよ。それならできるでしょ? ほらっ」
 香織は、気色ばむこともせず、余裕たっぷりの笑い顔で、こちらを直視していた。おそらく、さっきの写真のことを、死ぬほど気にしている涼子の心情を、しっかりと見抜いているのだろう。
 
 くそ……。無力感に打ちのめされた涼子は、なげやりに手を伸ばした。指に引っ掛けた体操着を下半身へと落としていき、太ももを合わせるようにして両膝で挟む。きっと、これもまた写真に残す気でいるのだ、と腹をくくった。
 けれども、三人は、にやにやと互いに顔を見合わせるばかりで、口を噤んでいる。



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