バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第十一章〜間隙
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 両脚の皮膚に、つるつるとした布地の感触を感じながら、どのくらいの間、俯き固まっていただろうか。
 だんだん、涼子は、奇妙な錯覚を覚え始めていた。この光景を、体操着の持ち主である滝沢秋菜に、どこかで見られているような……。情けない。こんな情けないこと、絶対に滝沢さんには知られたくない。
 
 悪い妄想が膨らみ、なおさら心身を蝕む。そのせいもあって、とうとう沈黙に耐えきれなくなり、涼子は、意を決して訊いた。
「えっ……。なに、もういいの? これで……」
 目の合った香織は、とぼけるように鼻で笑った。
「ああ、ごめん。今、やるから、そのままでいて……。言っておくけど、滝沢さんのシャツ、手で取ったり、下に落としちゃ駄目だよ」
「ホントにやるんですか? 香織先輩……。なんか、あたし……、やりたいような、やりたくないような」
「今さら何言ってんの? だって、南さん、約束破って腋毛剃ってきちゃったじゃん。それに、肛門検査も拒否るし」
「あっ、そっかぁ」
 香織とさゆりは頷き合い、ふいに、こちらに詰め寄ってきた。
 
 やるって、なにを……。なんなの……。
「えっ、ちょっと、まって、まって! なに!?」
 涼子は慌てふためき、体操着を挟んだ不自由な両脚を、後ずさりするように、がたがたと動かしていた。しかし、死にもの狂いの抗議にも、二人は、まったく意に介さず、香織が真ん前に立ち、さゆりが背後へと回った。

「ほらぁー、せんぱーい。じっとしてて下さいよー。シャツを床に落としたら、おしりの穴の検査しますからねー」
 さゆりの手が、ぺたりと涼子の肩に触れ、ぞんざいに体を押してきた。とても年上の生徒に対する振る舞いとは思えないが、今は、それに腹立ちを感じる余裕すらない。
 
 その時、前にいる香織が、ふわりと体勢を低くし、立て膝になった。片手で覆っているだけの下腹部に、突然、香織の顔が迫ったので、反射的に腰を引きそうになるが、すんでのところで堪えた。後ろの後輩に向かって、剥きだしのおしりを突き出すことになるからだ。



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