バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第十一章〜間隙
7



 しかし……。
 ほっぺたの感触を確かめながら、顔を撫で下ろし、涼子は瞼を開いた。
 
 やはり何も変わらず、悪意が服着て歩いているような女たちを前に、自分は、一糸まとわぬ姿で立ち尽くしており、そして、禍々しい拷問具へと変質した体操着の白い色が、目に飛び込んでくるのだった。
 こんなのおかしい、狂ってる……。もう教室を出て、家に帰ろう……。
 そう思いかけた時、突如として、滝沢秋菜の顔が、まざまざと脳裏に浮かび上がった。高校生にしては大人びた顔立ち。胸元で毛先の揺れるストレートヘア。涼しげで知性の深淵を感じさせる眼差し。
 ふと、その彼女が、机の中に入った一枚の写真を手に取ったところで、脳裏の情景は、めまぐるしく動きだした。
 彼女の理知的な眼差しには、軽蔑の火が宿り、涼子の席を鋭く睨みつける。所変わって、ひと気のない教室で、彼女は、怒りを露わに涼子を問い詰めている。あるいはまた、彼女は、クラスの友人たちにも、その写真を見せていた……。
 
 際限なく膨らんでいく悪夢の未来図を、涼子は打ち消した。汚辱の黒い染みが、周囲に飛び火する事態だけは、避けなくてはいけない。
 なにがあろうとも……。
 涼子は、両の拳をぎゅっと握りしめ、前に脚を踏みだした。一歩、また一歩と、香織とさゆりの作る、白い間隙へと進む。待ち構える少女たちは、無情にも、勝ち誇った薄笑いを張りつけている。



次へ

登場人物・目次
小説タイトル一覧
メニュー
トップページ

PC用のページはこちら

Copyright (C) since 2008 同性残酷記 All Rights Reserved.