バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第十一章〜間隙
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 ふしし、とさゆりが笑って呟く。
「毛の音が……、じょりじょりいってる……」
 後輩の露骨な指摘のとおり、肉厚な大陰唇を覆い尽くす陰毛と、前後に往復する体操着とが摩擦し、ざらついた微音が股の下から聞こえてくる。少女たちに一斉に聞き耳を立てられ、涼子は、羞恥心をより一層煽られるのだった。

「ねえねえ、南さん……。ちょっとは自分のま○このほう、見てみなって。滝沢さんのシャツなんだよ、これ……。滝沢さん、このこと知ったら、どうするかな? 友達になってくれるかな?」
 香織の嫌味には、ある程度の耐性がついていたが、くだんのクラスメイトの名前を聞くと、否が応でも、まともに反応してしまう自分がいる。
 
 見るべきでない光景だった。滝沢秋菜の体操着の赤い丸首の部分は、見事なまでに、涼子のもっさりとした陰毛群の中に埋まっていた。前の香織が、ゆっくりと腕を引き、体操着が前方に移動すると、黒々とした陰毛が藻のように揺らぎながら、丸首の赤いラインが股間から覗きだす。
 
 いやだ……、きたない……。これ、滝沢さんが着るものなのに。しかも、首を通すところなのに。こんなこと、本人には絶対に知られたくない。もしもバレたら、わたしは生きていけない……。
 
 目を逸らすが、身の毛がよだつような光景は、脳裏にこびり付いて消えなかった。すると、少しでも性器を体操着から離そうという無意識の表出なのか、涼子の裸体は、ほとんどつま先立ちになっていた。下半身に力が入りすぎて、ふくらはぎの筋肉が浮き上がり、おしりの割れ目までもが、接着したように、ぴたりと閉じ合わさっている。
 むろん、それが無意味だということに、涼子自身、理性では気づいていた。涼子の肉体が、激烈な反応を示しているので、香織とさゆりは、大変満足した様子を見せ、そうして、わずかに上昇しただけの股間へ、体操着を引き上げるだけなのだった。
 
 執拗かつ無情に、性器に布地が当てられ、涼子は、どっと絶望感に襲われた。
 滝沢さんの……。どうしよう……。わたしの、こんなところの汚れが付いた体操着なんて、あの子に着せられない、着てほしくない。
 
 無様だった。踵が浮いて体勢が不安定なため、ますます震える涼子の裸体には、もはや、バイタリティー溢れる普段の面影はなく、まるで釣り上げられてのたうち回る魚類のように無様だった。

「ほらっ! せんぱーい。また力が入ってますよぉ。なに、そんなにケツ引き締めてるんですかぁ? リラックスしないと!」
 さゆりは、性根の腐り加減を露わにし、年上の女の裸出したおしりを、容赦なく平手で打った。飛び上がりそうな驚愕に、涼子は、思わず低い悲鳴を上げていた。
 長らく眺めていただけの明日香が、笛の音のような笑い声を立てると、それが呼び水となり、少女たちの哄笑が起こる。
 くそ……。『ソ』の音が、涼子の唇から微かに漏れた。



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