バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第十三章
隔絶された世界
1



 奇妙な夢の中をさまよっている境地だった。脳に伝わってくる外界の情報のすべてが信じられない。体操着に群がる少女たち。発せられる言葉。そして、鼻孔に流れ込んでくる、臭気。
 気づくと、裸足の足を踏ん張っており、はっとする。よろめいたのだ。
 果たして、立っていなければいけないのだろうか。夢なら、倒れてしまったって、いいじゃない。
 体操着をつまみ上げた吉永香織は、顔をしかめて何事かを言っている。その声に、ぐわんぐわんと耳鳴りがし、眩暈を起こした。
 その隣にいる石野さゆりは、鼻を押さえ、顔の前で手を振っていた。
 とても現実の出来事とは思えないが、かといって夢というわけでもなさそうだ。今、少女たちの言葉が耳から耳へと抜けていくのは、脳の防衛機能のためだろうか。この状態で、次、ショックを与えられたり、恐怖を感じさせられたら、たちまち発狂してしまいそうだ。
 
 南涼子は、ただひとり全裸で立ち、両手でぎゅっと恥部を押さえつけていた。指先は、ねっとりとした液体に濡れている。三人の女に見られている中で、この部分から、体液が溢れ出したのだ。
 それは、いやらしいこと。事情がどうであれ、涼子自身にも、そういうふうにしか形容できない。
 いやらしい汁を垂れ流した女、という三人の視線に、裸出した肌を舐め回されているように感じる。
 竹内明日香が、何とも言えない半笑いの表情で、涼子を見ていた。もしかしたら、下品で変態的な明日香にさえも、今、わたしは、軽蔑されているのかもしれない。
 涼子は、凍りつくような劣等感に締めつけられ、身じろぎひとつできなかった。
 やだ……。恥ずかしい……。もう、明日からは、この三人のいるこの学校には、とてもじゃないが登校できない……。
 
 けれども、ふと、違和感を抱いた。いや、ちょっと違う、と思い至る。世の終わりが訪れたかのようなショックに打ちのめされていたが、本当の死活問題は、ここから先にあるのだ。



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