バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第十三章
隔絶された世界
6



「りょーちーん」
 明日香が、あの甘ったるい声を出し、再会を喜ぶかのように駆け寄ってきた。
「りょーちん。あたしもぉ、さっきは、ひどいことしちゃってぇ、ごめんねぇ」
 明日香は、ぽんぽんと涼子の頭を撫で、くすりと笑った。今後もずっと、涼子を好きにできる、という余裕と優越の態度だった。
 
 どこかぼんやりとしていた目の焦点が、前に立つ女の輪郭を捉えていく。
 セーラー服から伸びた腕は、驚くほど色白だった。ゆるいパーマの掛かった茶色い毛先が、眼前で揺れている。小悪魔めいた目鼻立ちは、どう見ても遊んでいるようにしか見えない。
 なぜ、わたしは、こんな女を信用し、バレー部に迎え入れてしまったのだろう。今更ながらに悔やまれる。すべては、そこから始まったのだから。
 
 ふいに、股間を押さえる両手に、ぴたっと右手を宛がわれ、涼子は、ぎょっとして体がこわばった。
「ねーえー……。いっぱい、まんじる垂らしちゃってぇ……。まったくぅ、そんなに、気持ちよかったのぉ?」
 涼子の両手越しに性器を刺激するかのように、やんわりと包み込まれる。
 思わず、両手にぎゅっと力が入る。指先には、べとついた陰毛の感触が伝わってくる。パンツを脱がされているという状況を、これまでで、もっとも恥辱に感じた瞬間だった。
 涼子が唇を噛んでいると、明日香は、ちょろりと舌を出した。その右手が、涼子のへその上を滑って離れていく。

「りょーちん、これでナカナオリ……」
 突然、明日香の両腕が、肩に伸びてきた。セーラー服の胸の部分に、乳房がぶつかる。着衣の華奢な体と、筋肉質で肉感的でもある裸の肉体とが密着し、対照的な色合いを見せる。
 またしても抱きつかれたのだ。これで何度目だろう。
「さっきは、乳首つねっちゃって、ごめんねぇ。痛かったでしょっ?」
 明日香は、ささやくように言うと、ふふっと不気味な笑いを漏らした。そして、突然、妙なことを始めた。わずかに体勢を落とすと、伸び上がるようにして、涼子の乳房へと胸をこすりつけてきたのだ。その動作を、くねくねと繰り返しだす。
 いやだ……。何考えてんの……。やめてよ、この、変態……。
 明日香は、挑発的な薄笑いの顔をしているが、時折、背筋の寒くなるような恍惚とした表情をも見せるのだった。
 身長差がそれほどなく、制服に包まれた乳房と、裸出した乳房とが真っ向からこすれ合う。涼子の紫がかった赤色の乳首が、セーラー服の生地にのたうっていた。
 後退しようとする涼子の体には、ほっそりとした色白の腕が絡みつき、それを許さない。
 やめて、と拒絶することすらできないのは、ひとえに、滝沢秋菜の体操着のことが意識にあるからだ。
 股間を押さえる不自由な格好で、背中が弓なりに反り、かかとが浮き始める。いやらしく体をくねらせる明日香の腕の中で、涼子は、恥辱にぶるぶると身悶えた。

「……うーん?」
 どんな感じなの、と問うように、明日香は声を発する。
 ボーイッシュなバレー部のキャプテンの苦悶の顔に、人形めいた美少女の悩ましげな顔が、舌を這わせるかのように迫っていた。



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