バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第十三章
隔絶された世界
11
「あと……、南さんは、シャツにうんこも付けちゃったから、後ろからも写真、撮るよ。滝沢さんのシャツで、けつの穴まで拭いたっていう、証拠の写真をね……」
野卑な笑みを浮かべる香織を見下ろし、涼子は思う。救いようのないほど品がないのは、この女なのか、それとも、わたしなのだろうか。
声も出せない涼子の背後へ、少女たちは、はしゃぎながら移動した。
「南さーん。今度は、シャツを後ろに思いっきり引き上げて、けつに食い込ませて。それで、かわいこぶった顔のまま、顔だけ、カメラのほうに向けて。あたしたちをイライラさせないように、一度で、きちっとやってね」
命令された通り、右手、つまり後ろの手で体操着を引っ張り上げる。自分の体液の染み込んだ布地が、肛門の粘膜をも濡らし、その汚辱感に背中の筋肉が引きつりそうになる。にもかかわらず、おどけるように頬を膨らませた表情で、そろそろと顔を後ろに向けていく。
少女たちは、互いの体をつつき合うように笑う。
「せんぱーい……。うんこした後に、トイレでちゃんとおしり拭かないで、滝沢先輩のシャツで拭いたってことが、これで確定しましたからねえ」
年上に対し、そんな台詞を吐く後輩が構えるカメラに、じっと目線を合わせる。
本当の絶望というものを、涼子は、ついに知った。目を開いていても、何も見えていなかった。だから、少女たちのくすくすと笑う声は聞こえていても、その表情はわからない。
ふと、脳裏に、薄ぼんやりとした情景が瞬いた。小学五年生の時、団地の公園の片隅で、一つ上の男の子と口づけを交わした、あの甘い思い出。それが、今、なぜか想起された。
なんだか、ずいぶん、遠いところへ来てしまったという感じがする。
今、自分は、同世代の少年少女たちが生きる青春の道とは、隔絶された世界に、ひとり全裸で立たされている。セーラー服を着て、普通の女子高生を装った、悪魔ですら青ざめるような女たちに、まとわりつかれて。
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