バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第十九章
しんしんと
15



 ……香織は、そのエピソードを聞きながら、激しい胸の高鳴りを覚えていた。
 
 明日香は、すこぶる得意げに言う。
「りょーちんが、あの子から貰った手紙にはねえ、ぜーったい、ぜーったい、『先輩のことが、大好きです』とかぁ、『あたしと、付き合ってください』とかぁ、そういう言葉が、書かれてたの」
 おそらく、実際にそうだったのだろうと、香織も確信する。ファンレターというより、ラブレターなのだ。その子の、涼子に対する思いは、憧憬というより、恋心と呼ぶほうがふさわしいに違いない。だが、あえて疑問を呈してみる。
「でも……、でもだよお? 女同士じゃん? そんな告白みたいなこと、書くかなあ?」
 すると、明日香は、ぽかんとした顔になった。その後、ふっと鼻を鳴らして笑う。
「だって、あたしだってぇ、今までに……」
 そう口にしながら、なにやら、右手の指を折り始める。右手では数えきれず、左手の指に移った。
「……もう、八回、いや九回かな。この学校の生徒からぁ、そういう告白の手紙、貰ったもん」
 香織は、ぐっと言葉に詰まった。
「だからぁ、まあ、言っちゃえば……、よくある話、なんじゃなぁい?」
 そうなのだ。南涼子も、また、目の前にいる竹内明日香も、同性である女子生徒からもモテてしまう、という点では共通しているのだ。香織にとっては、まるで、別世界の話のようであるが。ただ、今は、そのような事柄に対して、羨望めいた感情を抱いていても、仕方がないだろう。
「そっか、そっか。明日香が、経験則から言うなら、間違いないね。その子が、南さんに渡した手紙には、告白の言葉が書かれていた、と。……となると、あとは、どうやって、その子に会うか、だよね」
 香織は、気を取り直して言う。
「ああ、それなら、簡単だよぉ。その子、毎日のようにぃ、放課後、体育館に来てるからさ。きっと、りょーちんのことが、好きすぎるんだろーねー」
 明日香は、事も無げに答える。
「えっ、そうなの!?」
 つい、声が大きくなる。
 香織は、明日香から、その生徒の外見的特徴を詳しく聞き出した。そして、今度こそ、明日香の両手を、ぎゅっと握り締めた。
 
 その翌日の放課後。
 香織とさゆりは、体育館の二階のギャラリーで、その生徒を発見した。一目でわかった。その場で、彼女と接触した。彼女は、足立舞という名前だった。



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