バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第一章〜運動着の中は
8



 異常としか言いようのない光景だった。こんがらがった思考の中で、一つの答えが出る。わたし、はめられたんだ……。
 どうして、今の今まで気づかなかったんだろう、と思う。
 香織もさゆりも、そして明日香も、目的は、涼子を裸にして辱めることにあったのだ。そう考えると、すべての辻褄が合う。
 つまり、合宿費を盗んだのは、この三人の仕業と見るべきだろう。バレー部の部室の中の涼子のバッグに、集めた合宿費があることを、明日香が、何らかの方法で残りの二人に伝えれば、それは可能だ。体育館の二階は、ギャラリーになっており、下のフロアを見渡せるし、声も届く。
 いや、そもそもの発端は、竹内明日香が、バレー部のマネージャーをやってみたいと言ってきたことから始まっていたのだろう。明日香は、スパイのようなものだったのだ。献身的な態度を示す一方で、涼子を罠に嵌めるのに好都合な機会を、常に探していたに違いない。その機会こそが、合宿費だったのだ。
 しかし、悔やまれるのは、そこから先である。
 この体育倉庫の地下に連れて来られてから、全裸にさせられるという事態に至るまでには、何か打つ手があったはずなのだ。
 自分の不注意のせいで合宿費が無くなったと、あの時、たしかに涼子は、激しく動揺していた。人一倍責任感と誇りを持ち、バレー部の大黒柱でもある涼子だからこそ、ことさらダメージは致命的だった。そんな弱味に付け入るように、香織は話を始め、涼子はまともに耳を傾けてしまった。
 生徒会、潔白の証明といった、もっともらしい言葉に翻弄され、犯人としてバレー部に報告するという脅迫により、精神を突き崩された。そのため、正常な判断ができなくなり、服を脱ぐなどという愚かな行為を取ってしまった。
 下着姿になった時点で、自信や冷静さを失い、相手に対抗できなくなった。そして、身に着けている最後のものを剥ぎ取られた瞬間、無力な人間と化した。
 
 マヌケだ。わたしは、なんてマヌケだったんだ……。
 涼子は、憤懣やるかたない気持ちで、自分の着けていた下着を捻くり回して愉しんでいる、三人の少女を見ていた。
 もし、今、わたしが服を着ていれば……。もし、わたしに、自信が残っていたなら……。あんな、卑劣なだけの軟弱な連中は、全員叩きのめして泣かせてやれるのに。たとえ、三人が一斉に襲いかかってきたとしても、涼子のパワーならば、容易にねじ伏せることができるはずだ。
 
 涼子は、唇を噛んだ。裸にされるということは、女として、いや人間としての自信や力を奪われることでもあるのだと、痛感する。
 香織たちは、それを、よくわかっていたのだろう。だから、これまでは、涼子が完全に無力な存在になるまでは、曲がりなりにも悪意を押し隠していたのだ。しかし、今は違う。香織もさゆりも、そして明日香までもが、腐った本性を隠そうともしていなかった。



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