バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第四章〜女の子の手
4



 香織は、酩酊感に背中を押されるように、煮え切らない態度の涼子に向かって足を踏み出した。
 頭を垂れていた涼子が、びくりと顔を上げ、じりじりと後ずさりしだす。その表情は、怯えによって引きつっていた。
 香織は、後退している涼子に詰め寄ると、両手を伸ばし、その腰をぐっと押さえた。涼子の体の皮膚が、まだ汗が乾いておらず、じっとりと湿り気を帯びているのが、掌から伝わってきた。
「ほらあ!」
 香織は、無意識のうちに怒号を発していた。そして、強引に涼子の体を引き戻す。
「いやあああ!」
 涼子が、獣の咆哮のような激しい声で叫んだ。
 尋常ではない嫌がりようである。たぶん、昨日、香織の手でパンツを下ろされた、あの悪夢が、涼子の頭の中でフラッシュバックしているのだろう。ちゃんと察しているのね、と香織はおかしく思った。

 香織は、涼子の腰に手を貼りつけた状態で、捕捉した肉感的な体が、厭悪によってがたがたと揺れる振動を愉しんだ。その振動は、ある意味、間接的に香織の下腹部を刺激するものだった。
「南さん、心の準備はいい?」
 もったいつけて涼子の恐怖心を煽りながら、さり気なく手の位置を変えて、白い綿の布地に指を滑り込ませる。香織は、上目遣いに、背の高い涼子の顔を見上げた。
 涼子の対応は、前日と同じだ。胸を隠すのを断念し、自分が身に着けている最後のものを両手で守ろうとする。申し分ない大きさの乳房全体が、反動でぶるりと揺れて、これまで、彼女が、頑なに視線から遮っていた乳首が、寒々しく露出する。
 香織にとっては、むろん、得も言われぬ眺めであった。

「ふうぅ……。ふうっ、ううぅっ」
 恐慌に襲われた涼子が、苦しげな荒い息を吐いている。涼子の人間らしい知性が、崩壊しつつある。
 そんな女の下着を、香織は、冷酷に引きずり下ろそうとしながら、『心優しい』忠告をしてやる。
「ねえ、南さん。女の子として、一番恥ずかしいところが丸見えになっちゃうよ。手で、隠しておいたほうが、いいんじゃない?」
 みっともなく取り乱したこの女に比べて、あたしって、なんてクールなんでしょう。
 すると、涼子は、あたふたしながら、両手を下着の中にねじ込んだ。その様子は、まさに滑稽の極みである。
 抵抗がなくなったので、涼子のパンツを、ずるずると太ももの位置まで下げると、蒸れた性器の臭いが一気に放出されて、香織の顔を包み込んだ。
 香織は、その臭気に顔をしかめながら、パンツを膝下まで下げていった。白い綿の布地の内側に、見事なまでに、縦長の黄色い染みがあるのを確認し、つい、にやけてしまう。最後の砦として、実にふさわしい代物だという感じがした。

「あ・し……」
 香織は、わなわなと体を震わせている涼子に対し、冷ややかな感じに、あえて言葉少なに告げた。
 脱がされた下着のことは、すでに諦めているらしく、涼子は、情けなくも、震える片方の脚をぎこちなく上げ、命令に従う。
 もう一方の脚が、どんと地面に着いたと同時に、香織は、汗とおりものとで汚れたパンツを、さっと手に持つ。今、涼子が、命がけで守っている部分に、さり気なく目を向ける。
「いやあっ。やめてぇっ……」
 涼子は、恐ろしい事態を予想したらしく、心底怯えたように後ずさった。
 その反応に、吹き出してしまいそうなのをこらえて、香織は、素早く右手を伸ばした。涼子の腕をつかみ、その場に留まらせる。
「えっ、えっ……、いや、やめてよっ」
 消え入りそうな涼子の哀願など、今の香織が意に介すはずがない。というより、むしろ、そういった声を耳にすると、涼子が精神の限界をさまよっている事実を再認識できて、嗜虐的な快感の度合いが、いや増すのである。



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