バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第六章〜穢れなき罪人
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 笑いもせず、無言で腰に手を当てている明日香だが、その眼差しは、涼子の一糸まとわぬ後ろ姿に、魅入ったように向けられている。彼女の目には、どう映っているのかと思う。
 香織は、涼子の背後に屈み込んでから今に至る、時間にして十数分ほどの間に、若輩ながらも、ある一つの真理に行き着いた。女の肉体の本質は、体が動いた時に現れる脂肪の揺れ具合にある、ということ。だらしなくぶよぶよと震えるのは醜いし、ほとんど震えないのも貧相である。頑健でしなやかな筋肉が下地にあることを思わせるような、弾力的で激しい揺れ方が、理想の肉体を暗示するものと言えそうだ。
 香織の文字通り目と鼻の先に、全裸で立っている女が、まさしくそうなのだった。
 醜態をさらした状況下でありながらも、そんな美点を見る者に印象づけるところなどは、腐っても鯛、さすがは南涼子、か。

「さゆりっ。この後ろ姿、撮って」
 涼子の肩がびくりと動き、こちらに体を向けるような素振りを見せる。剥き出しのおしりを写真に残されることに、恐怖を覚えたのだろう。
「なにー? 南さんっ。落ち着かなそうだけど……。言いたいことあるなら、なんでも言っていいんだよ? でも、ちゃんと前を向いたままで、いてね」
 香織は、冷笑的に揶揄してやった。
 その冷たい牽制で、涼子は、すべてを諦めたかのように全裸の体を止め、うなだれる。
 さゆりが、涼子の真後ろに陣取り、デジタルカメラを構えた。
「何枚も撮ったほうが、いいですよね? 全身を撮って、それからあと、おしりをアップにしたり、角度を変えたりして……」
 さゆりは、うきうきとした調子で、勝手に構想を語りだす。
 これで、でっかくて汚らしいおしりを無様にさらしている南涼子、もコレクションに追加されるわけだ。
 陰鬱な体育倉庫の地下に、三人のせせら笑う声が響く中、異質なシャッター音が、幾度も空間に弾き出された。



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