バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第六章〜穢れなき罪人
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 依然、涼子には、万歳の格好をさせている。香織たち三人は、涼子と適度な距離を取って並び、その様子を眺めていた。
 ずっと腕を上げさせているので、肉体的にも、かなり苦しいはずだ。だが、そういった類の苦痛を与えるのは、香織の本意ではない。目的はあくまで、辱めによって、精神の限界をさまよわせ続けることにある。
「じゃあねえ……、南さん。今度は、頭の後ろで手を組んで、刑務所の犯罪者みたいに。……ってゆうか、南さんは、ホンモノの犯罪者だけどね」
 香織は、清廉潔白の身である涼子が、悔しさに歯ぎしりしそうな言い回しで、次の体勢を指示した。
 それでも涼子は黙って従った。力なく腕を動かし、両手を頭の後ろへやる。
「うわぁ……。裸でそーやるとぉ、ホント罪人って感じぃ」
 明日香が、驚嘆と軽蔑の混じった呟きを口にする。

「ほらっ。ちゃんと胸を張って顔を上げてっ。こっちを向かないと、撮れないでしょっ」
 どぎつい注文を付けながら、香織は、ここまで非情になれる自分自身のことを、少々意外にも思っていた。
 一線を越えてしまったという感が、再燃してくる。第一、あたしは、この子に憧れみたいな気持ちを持っていたんじゃなかったっけ。なんで、こんな、とんでもない格好を強制しているんだろう。根本的な原因を忘れてしまった気がする。
 ……でも、まあ、いいか。だって、今、あの南さんが、素っ裸で、完全な服従のポーズを取っているんだもの。罪人みたいな。あるいはまた、憎らしいほど形のよい豊満な乳房と、包み隠しのない陰毛が、週刊誌のグラビアに載るAV女優をも思わせる。
 南涼子の無惨な成れの果て。そして、彼女を、こんなふうにまで追い込んだ、あたし。強力な権力を握った、冷酷なサディストの、凄いあたし……。
 香織は、誰にも気づかれないように注意しながら、さり気ない手つきで、スカート越しに下着をつまみ、性器に食い込ませた。
 嗚呼……。うっかり淫らな声を漏らしそうになるが、なんとか自制する。愛液が溢れ出し、股間の肉までもが濡れ始めていた。帰りの電車の座席には、とても座れないな、などという下らぬ思いが、一瞬、脳裏をよぎった。

「しっかり、撮らせてもらいますからね、南先輩……。ちゃんと、カメラのほうを見てて下さいよ」
 もはや、涼子をもてあそぶことを、積極的に愉しんでいる後輩の声で、ふわふわとしていた香織の意識が元に戻る。
 明日香が、いつもの、笛の音に似た笑い声を立てる。それを合図としたかのように、さゆりは、シャッターを切り始めた。
 さながら罪人のポーズで、アンダーヘアーまでさらしている、紛れもない南涼子、がコレクションに追加されるのだ。さゆりが何枚も撮り続けているので、たぶんほかには、顔面や乳房、脇の下、恥部のアップまでも。



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