バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第八章〜密室
9



 耳に付く笑い声を漏らす明日香と、にやにやと薄笑いを浮かべるさゆりとが、涼子の体を挟むように立ち、香織が、いやに勿体ぶった足取りで正面にやって来る。
 ひとり全裸の状態で、三方向を取り囲まれるという、拷問のような圧迫感。震えるような屈辱。
 今、何より悔しく思うのは、パワーには絶対の自信があるというのに、文字通り手を出せないため、自分よりも遥かに弱い香織の暴力を甘受した挙げ句、それによって屈服させられたこと。こんな卑小で貧弱な女の暴力に。
 自分にとっての力のよりどころが、どこにも無くなってしまった感じがする。もはや、気持ちが折れそうだった。

 そんな涼子に、香織の口から、情け容赦のない要求が告げられる。
「まずはボディチェックから始めるよ。言っておいたよね、毛の処理は禁止だって。ちゃんと守ってるか今から調べるから、南さん、両手を頭の後ろで組んで」
 つい今しがた、怒って乱暴な真似までしてきた香織が、そのことはもう忘れ去ったように笑っている。香織の思考回路は滅茶苦茶だ、と涼子は思った。そして、今、口にした、唖然とさせられる命令。
 この女は頭がおかしい……。
「イエーィ」と、明日香がムードメーカーよろしく手を叩いた。
 その反対側のさゆりが、いきなり、初めて耳にするような大声で笑いだした。なにか、惨め極まりない涼子に対する先輩たちの畳みかけに、思わず吹き出してしまったという風情である。
 首謀者の香織は、ねちっこい目つきをして、恥辱にまみれた涼子の姿を眺めている。
 一つわかったことがある。三人の悪意は、体育倉庫の地下での初日、その翌日、そして今日、と確実にエスカレートしているのだった。
 つらい……。もう耐えられそうにない……。
 涼子は、この日の地獄の入口に立たされていることを、ひしひしと感じ取っていた。



第九章へ


登場人物・目次
小説タイトル一覧
メニュー
トップページ

PC用のページはこちら

Copyright (C) since 2008 同性残酷記 All Rights Reserved.