バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第九章〜肉塊
7



 今、前にいる三人が、同じ女とは思えない露骨な目つきで、涼子の恥部を直視している。
 濃いほうだ、と自覚している陰毛。正気を失いそうな恥ずかしさ。なぜ、わたしは、高校生活で、こんな有り得ない屈辱を受けなくてはいけないの。どうかしてる……。
 その時、涼子とそれほど身長差のない明日香の頭が、ふいに、ふわりと降下していった。
 ぎょっとして、涼子は目を剥いた。今、明日香はしゃがんで、涼子の股の位置に目線を合わせているのだ。
「えっ……、ちょっ、いや!」
 涼子は慌てふためき、腰を引いて明日香から離れ、たまらず股間を両手で押さえた。一瞬間だったが、自分の『ここ』と明日香の目鼻とがニアミスした事実を思うと、ぼっと顔中が熱くなる。もう、いいかげんにして。なに考えてんのよ、この、変態。
 涼子は、軽蔑を込めて明日香を見下ろした。だが、明日香のほうは、ぽかんと口を半開きにし、とぼけた表情で見返している。まるで、これぐらい我慢できないの、とでも問いたげな風情である。

「なに逃げてんだよ! それに、ちゃっかり手で隠してんじゃねーよ」
 香織が、不良少女そのものの態度で怒鳴り、鬼の形相で迫ってくる。声を出す間もなく、涼子の両手は、なぎ払うようにして引き剥がされ、再び恥部が露出した。
「まん毛の検査するんだから、ちゃんと明日香の前に立って、近くで見てもらうんだよ。ほら、さっさとしろよ」
 背中に香織の手が回ってきて、ぐいぐいと体が押される。涼子は、反射的に両脚に力を入れて踏ん張った。
 二歩前に出たらぶつかる位置に、依然、明日香はうずくまっており、甘えるような、なんとも言い様のない視線を涼子に投げかけている。その姿には、まるで妖魔か何かを思わせるようなおどろおどろしさがある。
 
 いや……。絶対にいや。ほんの短い間のニアミスでさえ、恐慌に襲われ、叫び声を発していたのだ。それを今度は、『長さのある時間』に引き延ばされるなど、その苦痛は、もはや想像すらできない。
 処刑台に引きずられるような恐怖に、涼子は死にもの狂いで訴える。
「しょっ、処理なんて、してません! 一目見て、すぐにわかるでしょう!?」
 自分で言いながら、救いようのないほど惨めな発言だと痛感する。
「うるせーんだよ! あたしたちがどう検査しようが、あんたは文句なんて言える立場じゃないの。これ以上だだこねたら、肛門の検査も受けさせるよ!」
 血も涙もない香織の言葉は毒針となり、涼子の神経を麻痺させた。視界が白く霞み、踏ん張っていた両脚が棒立ちになる。
 その直後、涼子の臀部に香織の膝蹴りがめり込んだ。脊柱が揺れるような衝撃と、皮膚と皮膚が擦れ合う不快な感触。
 涼子は息がつまり、体のバランスを崩して、不覚にも脚がどたばたと前に出ていた。



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