バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第九章〜肉塊
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 明日香の生白い両手が、待っていたように徐々に涼子の腰へと伸びてくる。金縛りの恐怖にとらわれたように、涼子はただ、足元にうずくまる明日香の挙動を目で追うことしかできなかった。
 おしり側から両脚の太ももを押さえられた瞬間、全身を電撃に覆われて筋肉が縮み上がる。明日香は、玩具を貰った幼児のような無邪気な素振りで、涼子の体をぐいと引き寄せた。裸足の足の裏が床と擦れ、もう半歩動かされる。
 うそ……、うそよ。こんなの。認めたくない思いで一杯だが、今この瞬間、涼子の下腹部と明日香の顔は、その吐息が吹き掛かりそうな至近距離にあった。
「手で押さえたりしたら、検査は終わらないからね。明日香がいいって言うまで、そのままだよ」
 横から、香織がねちねちと釘をさしてくる。
「うっわぁ……、きっつうー……」
 さゆりが両手を口に当て、笑い声を漏らして呟いた。

 両脚が、抑えようもなく激しく震えだす。もはや、耐えがたい恥辱というレベルではなく、涼子は人間性を失いかけていた。いつまで……、いつまで、こうしてないといけないの……。
 突然、涼子の体を捕捉する冷たい両手が、太ももや腰骨、臀部を間欠的に撫で回し始めた。下腹部と同じ高さにある彼女の表情も、同様に変化する。妙に真剣な目をしていたり、鼻をひくつかせたり、苦々しそうに顔を歪めたかと思うと、次にはなんとも妖しげな笑みを見せる。
 今、涼子の性器は、明日香の目と鼻で知覚されているのだ。その受け入れがたい事実をなおさら強調する彼女の表情など、本当は視界に入れていたくない。だが、涼子は、決して目を背けることができなかった。
 最後の一線だけは犯されたくないという思い。包み隠しのない無防備な性器は、今、未曾有の危機に晒され、感覚神経がひどく鋭敏になっていた。もしも刺激を加えられたら、即座に絶叫してしまいそうだった。『そこ』だけは触らないで……。そう目で訴えながら、明日香の手といわず顔といわず、その一挙一動のすべてに対して身構えていなくてはならないのだ。
 
 ふと明日香が動きを止め、ゆっくりと面を上げた。身も凍るような上目遣いと、頬を膨らませた薄笑いの顔つき。
 つい数日前まで親しく会話を交わしていた、美貌のバレー部マネージャー、竹内明日香の顔が、なぜか、自分の黒々と盛り上がった陰毛の前にあるのだった。なんだか、この世でもっとも見てはいけない類のものを見せられている気分だ。
 あんたは、ほんとうに、いったいなんなの……。
 互いにじっと目を合わせていると、明日香は、涼子の太ももを押さえ付けたまま、笛の音みたいな声を響かせて笑いだした。



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