バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第十章〜波及
5



「あたしたち、あんたのこと、絶対に許さないから……。約束破って、さらに騙そうとしたんだから、当然だよねえ?」
 散々、涼子の乳房をいじくり回した後、香織は、そう言い放った。
 もう言葉も出ない。涼子は、終生拭えない手垢の付いた乳房を、そっと両手で押さえ、暗澹たる気持ちで頭を垂れた。
「ねえねえ、明日香……。ボディチェックにずいぶん手間取っちゃったけどさ、そろそろ、あのこと始めようかな、って感じなんだけど……。南さんに制裁ってことで」
 どうやら、香織の物言いからすると、すでに、おおまかな筋書きが出来上がっているようだ。
 なんのことはない。たとえ、涼子が『約束』を守り、『検査に合格』したとしても、自分たちが事前に盛り込んだ計画は、余すところなく実行するつもりだったのだ。

 涼子の汚辱と香織たちの悪意とが融け合う黒い闇は、いつ果てるともなく続いている。希望の光の届く気配すらない、絶望そのものという闇だった。
 だが、だんだんと、その闇に順応し始めている自分に気づく。順応とは、つまり、この状況で恥辱感や恐怖心といった感情が鈍麻し、人間性を失っていくことに他ならない。
 ふざけてる、こんなの。ふざけてるよ……。
 ふと、涼子は視線を落とし、自身の濃い陰毛を眺めた。こんな恥ずべき部分を、同じ女子生徒たちの目に晒しっぱなしだという実感が、いつからか妙に薄れていた。なにやってんだろう、わたしは……。



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