バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第十章〜波及
7



「南さん、勘違いしないでよ。おしりの穴の検査は免除してあげるけど、嘘ついたこととか、許したわけじゃないからね」
 香織の戯言にさえも、目上の人に対するように、はい、と涼子は返事する。
「この辺の、動かしちゃった机を、元の位置に戻しておいて。それが終わったら、こっちに来て。大事な話があるの」
 香織は、妙にしんみりとした口調で言いつけると、残りの二人に目顔で合図をする。
 彼女たちは、全裸で立ち尽くす涼子を尻目に、教室の窓際のほうへと歩いていく。

 大事な話、はなし……。
 話だけなら、なんで移動する必要があるの。そっちに行ったら、何があるっていうの。
 涼子は、鉛のように重たい体を動かし、どけられていた机と椅子を列に直していく。その作業の途中で、強烈な不条理感に襲われて立ち眩みがした。
 三十以上、縦横に並んでいる机と椅子。そして、普段、そこに着席しているクラスメイトたち。時計の針を少しばかり戻せば、みんなの賑やかなお喋りの声が聞こえてくる。
 その教室で、なぜ今、わたしは、着ているものをすべて、下着までも脱がされて立っているのだろう。
 自分ひとり、クラスメイトの輪から外され、異次元の中へと引きずり込まれているような気分だった。
 机を持ち運びながら、涼子は呪った。この黒い闇を作りだした三人の女を、そして、自分自身の不幸な運命を。



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