バレー部キャプテンと
よこしまな少女たち
第十九章
しんしんと
17



 二日前、つまり、バレー部の練習場で、涼子を、徹底的に辱めた、あの日。
 太陽もだいぶ西に傾いた頃、香織とさゆり、それに秋菜と舞を加えた四人で、学校を出た。その後の出来事である。
 
 四人は、バスで学校の最寄り駅に移動した。それから間もなく、駅のすぐ近くにある、喫茶店に入った。
 テーブル席に腰を落ち着けてから、舞を除いた三人は、本性を露わにし始めたのである。まず、バレーコート上における涼子の痴態は、香織たちの強要によるものだったことを、舞に、それとなく明かした。それにより、いくら頭の弱そうな一年生といえども、自分の置かれている状況を理解したようだった。あろうことか、憧れの南涼子を虐げる者たちと、自分は、仲良くテーブルを囲んでいるのだ、と。しかし、舞は、怒って席を立つでもなく、戸惑いの様子を見せながらも、三人の話を聞き続けた。
 ほどなくして、話題は、次、どういう方法で、涼子を辱めるか、という計画のことに移った。ただし、三人とも、性的な内容に関しては、暗にほのめかすような表現にとどめた。むしろ、そのほうが、舞の好奇心をかき立てるのには、効果的だろうと判断したからだ。
 そうして、店に入ってから、一時間も過ぎた頃である。
 舞は、とうとう、甘えるように言い始めた。
「教えてください。先輩たちは、南先輩に、どんなことしようとしてるんですかぁ? 教えてくださいよぉ」
 何か恐ろしい答えを期待しているような、彼女の顔。
 香織は、それを見て、舞が落ちたことを確信し、その上でなお、さあ、どんなことしよっかあ、とあやふやに返したのだった。さゆりと秋菜も、手応えを感じているかのように、にたにたと笑っていた。
 そして、その店で、舞と連絡先を交換した。
 
 あれから、二日。
 香織は、窓の外の暗闇を、何気なく眺めた。
 時間的には、舞も、まだ起きているはずだ。明日のことは、すでに、舞に伝えてある。放課後、体育倉庫の地下で、涼子の過激な姿を鑑賞できる、一般非公開のイベントを行う予定である、と。こちらとしては、今夜のうちに、舞から、なんらかの返事を貰いたいところなのだが……。
 
 その時、勉強机の上のスマートフォンが振動した。メールの着信だ。
 画面を確認してみる。
 送信者は、足立舞。
 本文には、こう書かれていた。
『明日、ちょっぴり怖いかもだけど、イベント楽しみにしてますo(≧▽≦)o』
 香織は、その画面を、じっと見つめた。しばらく、そうしていた。
 徐々に、腹がひくひくとし始める。ははっ、はっ、はははっ、と笑いが漏れた。
 南さん……。あんたって人は、本当に、ツイてないねえ……。
 腹を抱えて、椅子に座ったまま、両足で床を踏み鳴らす。
 涼子の運のなさが、おかしくてたまらなかった。滝沢秋菜が、香織たちの側に付いた、それだけでも、涼子の不運ぶりは、相当なものである。ところが、それでは終わらず、今度は、足立舞までもが、涼子の敵と化してしまったのだ。南涼子……。まるで、不運が服を着て歩いているかのような女。なんと哀れな。今や、涼子の存在そのものが、何かのジョークのように思えてくる。
 それにしても、舞は、明日、体育倉庫の地下で行われるイベントが、どれだけ陰惨なものになるか、ちゃんと想像できているのだろうか。……いや、充分、わかっているに決まっている。わかっていながら、それに参加したいという意思を示したのだ。あのエロガキめ。



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